2006年2月28日。12:00時。

行ってきました『PIERRE GAGNAIRE à Tokyo』へ!
(ピエール・ガニェール・ア・東京)

感想を一言で表現するなら「楽しい『おもちゃ』がたくさん詰まった宝箱」でした!

ランチのメニューは数品のアラカルトと『Menu du Marché (ムニュ・デュ・マルシェ)』 と名付けられた 7,350円のコース料理、1種類のみ。
『Menu du Marché』とは「市場からのメニュー」の意味ですね。
来店していたほとんどの方がコース料理を注文していたようでした。

もちろん俺たちも例外ではなく Menu du Marché を選択。

食事の始まりは、もちろんシャンパーニュから。
昼間飲むシャンパーニュのなんと優雅なことか!

ギャルソンの方から手渡される『フォアグラのコロッケ』、続いて『ピンクペッパーのフィナンシエ』、カリカリした食感の『キャラメル風味のクルスティアン』、『生姜のサブレ』など、一口サイズのシャンパン・アミューズを堪能。

メゾンカイザーから仕入れているという『海藻のパン』も美味です。

Vin Rouge 赤ワイン

あっという間にシャンパーニュを飲み干してしまったため、早速ワインを所望。
ブルゴーニュの『ヴォーヌ・ロマネ』と迷った末、チョイスしたのは『1996 Chateau Beychevelle』のハーフボトル。

Pierre Gagnaire a Tokyo

ボルドーの Saint-Julien 地区の第4級のワイン。
Saint-Julien独特の杉の木の香りに似た芳香を放っています。

ソムリエの方が「まだ少し若いですね」とのことだったのでデキャンタージュしていただきました。

Les Amuses アミューズ

「アミューズ」とあるが事実上前菜にあたります。

Pierre Gagnaire a Tokyo

右下から、時計回りに、
『Mariniere de poulpe acidulee』
(酸味を効かせたタコのマリニエール)
ヴィネガーを使ってゆっくりと火を入れたようで食感はとろけるように柔らかく、添えられたイクラとの相性もバッチリ。

『Oeuf de caille au vert ; mayonnaise de choux fleur』
(うずらの卵の"グリーン"仕立て、カリフラワーのマヨネーズで)
半熟の状態に火入れしたうずらの卵の表面に、ハーブ風味のパン粉をまぶしてあります。

『Polenta jaune, melee de courgette et enokis a l'oseille』
(ポレンタ、えのき茸のオセイユ風味とズッキーニ)
上にのっているのはパルメザンのチップス。
それぞれの素材が繊細に調理してあり、厨房内の丁寧な仕事を想像できます。

『Chantilly de panais, anguille et Karasumi』
(パースニップのシャンティイ、鰻の薫製とカラスミを添えて)
これは絶品。
これ以上ないくらい軽くてなめらかなパースニップ(白人参)のピュレです。
底に隠された鰻の薫製とカラスミの塩気が全体を引き締め「極上のワインのおつまみ」といったところです。

右上の一皿は、メニューに掲載してありませんでした。
(ビーツのコンフィとクリームチーズ)です。
こういう見た目も鮮やかな一皿は食欲をそそります。

Le Poisson 魚料理

魚料理は軽いカレーの風味が香ってオリエンタルな感じ。

Pierre Gagnaire a Tokyo

『Cremeux de riz noir, salpicon de rouget et potimarron en tandoori』
(黒米のクリーム、ルージェとカボチャのサルピコン タンドリーの香り)

Le Plat Principal メイン料理

Pierre Gagnaire a Tokyo

『Joue de boeuf wagyu longuement braisee au vin de syrah.
Creme de pomme de terre au celeris, choux de bruxelless』
(シラーワインを使った和牛ほほ肉の長時間煮込み
ジャガイモと根セロリのピューレ、芽キャベツを添えて)

これは意外でした。
メイン料理はかなり捻ってくるだろうな、と想像(期待)していたのに、驚くほどオーソドックスな一皿で。
しかし「Pierre Gagnaire らしくない」と考えるのは軽率なようで、添えられている芽キャベツの上には飴があしらってあったり、牛ホホ肉自体も独特の調理法の効果もあるためか、これまで味わったことが無いほどのとろけるような食感。

付け合わせの「ジャガイモと根セロリのピューレ」に至っては、
Joel Robuchon を三ツ星に押し上げた「ジャガイモのピューレ」に匹敵するほど。
いろんな意味で「唸る」一皿でした。

Les Desserts デザート

三皿続くデザートの最初の一皿。

Pierre Gagnaire a Tokyo

(シロップでマリネした苺と、苺のソルベ、バナナのロースト)

二皿目のデザート。

Pierre Gagnaire a Tokyo

(ラムのゼリー、カスタードクリーム入りのアーモンドのテュイル、ラムを効かせたビスキュイ、生姜のコンフィ)

三皿目のデザート

Pierre Gagnaire a Tokyo
『Chocolat Pierre Gagnaire』
(ショコラ・ピエール・ガニェール)

ピエール・ガニェール自らの名を冠したデザート。
アーモンドの糖衣がけとチョコレートのビスキュイがしのばせてあり、
その上にパリッとした歯触りのショコラのディスク。
ミルクのエアーにチョコレートクリーム。

口の中に広がり、鼻に抜けていく香りが強烈!

Mignardises ミニャルディーズ(所謂お茶菓子)

Pierre Gagnaire a Tokyo

(マジパンに、カシスらしい果物のピューレを閉じ込めたものと、焼酎と生姜のゼリー添え)
(クルミとキャラメルのタルト)
(おそらく、林檎であろうもののパート・ド・フリュイ)

説明を聞かないと混沌の世界。
このとき既に俺はワインの飲み過ぎで軽く酔っぱらい、ギャルソンの方の言葉は右から左に聞き流していました。

最後にコーヒー。

Pierre Gagnaire a Tokyo

会計は、
・Menu de Marche : 7,350円 × 2人
・Evian 500ml : 740円
・グラス Champagne : 1,890 × 2
・1996 Chateau Beychevelle : 7,000
・サービス料 12 % : 3,146

合計 : 29,366円。

たいへん豪華なランチタイムになりました。

帰り際には『ヴェルヴェーヌとミントと生姜のアンフュージョン』(ハーブティー)をいただきました。
爽やかな香りで口の中がさっぱりして若干酔いも醒めます。
イイですね。こういうサービスは。

およそ10年以上前。フランスのある料理評論家の方が、サン・テティエンヌに存在し、1996年に閉店したレストラン「Pierre Gagnaire」に訪れた際、「スゴく美味しかったことは確かだ。ただ、何を食べたかは覚えていない」という感想を漏らしたそうです。

今回はじめてピエール・ガニェールの世界を体験したワケですが、俺が抱いた感想も彼のものと似ています。

食事の最初から最後まで飽きさせることがなく「お?何だコレ?」と思わせる発想、テクニックは天才的だと思います。それを支えるスタッフの方々も素晴らしいですね。他店舗のクオリティを軽く凌駕し、食事を終えたときの満足感、至福感は格別なものに。

時計に目をやると既に15:00時過ぎ。

レストランに訪れた来客者に「ささやかな驚きを与えたい」というピエール・ガニェールの思想ががたくさん詰まった密度の高い貴重な体験でした。

『厨房のピカソ』と冠される所以。
Pierre Gagnaire。
彼の思想を垣間見れたアッという間の3時間でした。